学び直しが大事って言うけど、何を学べばいいのかな
先にしっかり目標を決めなきゃいけないんじゃない?
こんにちは。
「りかれんとぱーく」のナビゲーター、Nikoです。
あなたはもしかしたら、「学び直しには、しっかりとしたキャリア目標がないとダメ」と思っていませんか?
私が面談をしてきた中でも「今後のキャリアのために何か学びたいけれど、明確な目標がないから始められない」という方がいらっしゃいました。
もちろん、目標は大切です。
しっかりとした目標があるなら、それに越したことはありません。
でも、まだ目標が決まっていなくても、学び直しをためらう必要はないのです。
なぜなら、学んでみて初めて見えてくる目標もあるから。
目標は自分が体験したもの ─ 見たり、聞いたり、読んだり、行動したりしたものから生まれます。
あなたが「これを目指したい!」というものにまだ出会えていないとしたら、体験が足りないだけかもしれません。
大切なのは、試してみること。
- 目標がないときの学び直しの始め方
- 偶然を最大限に活用するための5つのスキル
- 明確な目標が必要なときもある
では、詳しく解説していきましょう。
目標が決まらず、学び直しが始められない人へ
目標を見つけるために学ぶ
厚生労働省が2021年度に行った調査※1では、「向上させたい能力やスキルがあるか」との問いに対して、93%の社会人が「ある」と答えています。
ところが、実際に学び直し(自己啓発)をした人は36%、非正社員に限るとわずか20%でした。
学び直しができない理由として、「適切なコースがわからない」「目指すべきキャリアがわからない」など、目的や目標※2が定まらないことが、「時間」「お金」に次ぐ上位にきています。
※1 厚生労働省 令和3年度「能力開発基本調査」(個人の調査対象は約2万人)
※2「目的」と「目標」は使いわけが必要な場合もありますが、ここでは「目指すもの」としてほぼ同じ意味で使っています。
■学び直しの問題点(正社員の上位5番めまでの回答)
(出所)厚生労働省 令和3年度「能力開発基本調査」を基にりかれんとぱーくが作成
そもそも、なぜ「学び直し」に目的や目標が必要だと言われているのでしょうか?
- 目標があれば、必要な知識やスキルを効率よく学べる。
- 自分が実現したい目標のためなら意欲がわく。
- 目標があれば、挫折しそうなときも「頑張ろう!」と思える。
なるほど、目的や目標はあった方が良さそうです。
とは言え、「目標が決められないから学び直しが始められない」というのは、とてももったいと思いませんか?
冒頭で書いたように、学んでみて初めて見えてくる目標もあります。
学び直したいけど目標が決まっていない人は、「目標を見つける」ことを仮の目標にして、 少しでも関心のあることからお試しのつもりで学んでみるのがおすすめです。
このときの学び方は、「必要な知識やスキルだけを集中的に効率よく」というわけにはいきません。
むしろ、探るように少しずつ、自分の興味や能力、価値観に問いかけるようにゆっくり学んでいけばいいと思います。
小さく始めて試してみる
お試しで学ぶポイントは、小さく始めてみること。
たとえば、「プログラミングってどうかな。ちょっと興味があるんだけど」と思っているAさん。
「プログラマーを目指したいかどうかはわからないけど、まずは試してみよう」 と、YouTubeや無料のオンライン講座などを使って小さく始めました。
始めてみると面白くなり、単発の有料講座なども利用して勉強を続けますが、プログラマーに転職したいとまでは思っていない自分に気づきます。
そのかわり、今までまったく知らなかったプログラミングの世界とプログラミング的思考に出会えたことが、自分にとっては大きな収穫だとだと思えてきたのです。
そして、プログラミングの勉強は続けながら、学んだスキルで自分の部署全体の業務効率化を図っていこう、という意欲がわいてきました。
試してみることで、新たな目標が生まれたわけです。
さらに、関連動画でたまたま知ったWebマーケティングの世界に興味がわき、本を何冊か読んでみました。
営業職の経験も生かせるし、自分にはこちらの方が向いていると感じたAさんは、Webマーケティングをもっと深く勉強してみたいと思い始めています。
ここでのポイントは「失敗しないよう慎重になろう」ということではありません。
むしろ、目標を見つけるために十分なトライ&エラーを重ねようということです。
もし、もっと本格的にプログラミングを学んでみたいとなれば、プログラミングスクールで学ぶことも選択肢に入るかもしれません。
ただし、プログラミングスクールは受講料が数十万円と高額な場合も多いので、体験クラスなどがあれば参加してみるのがおすすめです。
まずは、小さく始めて試してみる。
なんとなく興味を感じていることはありませんか?
あれば、YouTubeで面白そうな動画を探してみましょう。
中国語でも、Webデザインでも、YouTubeにはたいていの初心者向け動画があります。
そのとき、動画を見るだけで終わらず、紹介された本があれば読んでみましょう。
また、やりたいことを見つけるためには、Schooもおすすめです。
Schooは、生放送の双方向授業に無料で参加できるオンラインサービス。
ITやデザインから、マーケティング、語学、教養まで、幅広いジャンルの授業があります。
アーカイブ動画を見るには有料のプレミアム会員になる必要がありますが、無料でお試し視聴ができる動画もたくさんありますので、チェックしてみてはいかがでしょうか?
興味がわいたらどんどん先に進めばいいし、なんか違うな、と思ったら別のことを試せばいいのです。
色々試してみることで選択肢が増え、可能性が広がります。
目標はいつでも変更していい
もちろん、すでに明確な目標がある人は、その目標に向かって進んでください。
もしその目標に違和感を感じ始めたら、考え直せばいいのです。
とは言え、せっかく始めたのにやめるのは悔しい!…ですよね。
今までかけた時間やお金も無駄になってしまう。
もう少し続けたら成果が出るかもしれない。
やめるか、続けるかの判断は難しいものです。
でも、違うと思ったら方向転換する勇気も必要。
とりあえず続けながら、並行して他のことを試してみる方法もあります。
次の項で紹介する「プランドハプンスタンス理論」でも、「人生の他の選択肢にオープンになる」ことをすすめています。
偶然の力を最大限に活用する
プランドハプンスタンス ー 計画された偶然
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が開発した有名なキャリア理論に「プランド・ハプンスタンス・セオリー(計画された偶然理論)」というものがあります。
これは、「偶然の出来事がキャリアに大きな影響をおよぼす」という考え方です。
クランボルツ教授と共著者による『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)では、想定外のできごとから幸運なキャリアを手に入れた45人の事例を紹介しています。
45人のなかで、クランボルツ教授自身のエピソードも語られています。
大学時代、テニスに夢中だったジョン(クランボルツ教授)は、三年生からの専攻分野をギリギリまで決められず、切羽詰まってテニスのコーチに相談します。
コーチは心理学の教授でもあったため、当然のように心理学を勧めました。
ジョンは勧められるままに心理学を専攻し、後に著名な心理学者になったのです。
「コーチが経済学の教授なら、経済学者になっていたかもしれない」とクランボルツ教授は語っています。
もちろん、運命を他人任せにしろ、と言っているわけではありません。
偶然の出来事から運命が決まることもある。
だから、人生の選択肢にオープンになろうということです。
私のプランドハプンスタンス
実は、私自身にもプランドハプンスタンス経験があります。
20代の終わり頃、ある仕事への夢が破れて次の目標も持てず、引きこもりに近い状態で悶々としていたときのことです。
ぼんやりと眺めていた新聞の求人広告の下に、翻訳制作会社が運営する実務翻訳スクールの広告を見つけました。
もともと人と会う仕事があまり得意ではなかったため、翻訳なら誰にも会わず家でできるかも、というネガティブな動機と、悶々からの脱出を求めて入学を決めました。
受講料がそれほど高くなかったことも背中を押してくれました。
しかしすぐ、フリーランスの翻訳者になるには語学力が低すぎることに気づかされます。
「トホホ、プロになるには何年かかるやら」と半ベソ状態でしたが、けっこう熱心に勉強しました。そうしないとついていけないですから。
ところが、そのスクールでプランドハプンスタンスがありました。
講師を兼任していた運営会社の翻訳責任者から、社内で編集・制作の仕事をしないかと誘っていただいたのです。
目指していた在宅翻訳の仕事ではなかったけれど、無職でもあったし、ありがたく受けることにしました。
結論から言うと、この判断は大正解でした。
編集・制作の仕事は新鮮で楽しく、予想もしていなかった世界が目の前に広がりました。
後の人生に影響を与える発見もありました。
「扱うものに興味があれば、人と会うことも苦にならない」ことがわかったのです。
残業や休日出勤も多く、時間的にはハードな職場でしたが、当時にしては自由な社風だったこともあり、のびのびと働いていた記憶があります。
数年後に転機が訪れて退職に至りましたが、数々の貴重な経験をさせてもらいました。
自分で求人情報を見て選んでも、なかなか理想の職場を引き当てることはできません。
「この仕事をしたい」と目標を決めても、それが最良かつ唯一のゴールとは限らないのです。
人生の選択肢にオープンになりましょう。
『その幸運は偶然ではないんです!』では、「18歳のときに考えた職業に就いている人は全体の約2%しかいない」という調査結果を紹介し、「将来の目標にこだわる必要はない」とも述べています。
あなたの周りを見回してみてください。
偶然のできごとから、思いがけない展開につながった人はいませんか?
あなた自身はどうですか?
そういえば…というエピソード、誰にでもあるのではないでしょうか?
偶然を計画するための5つのスキル
ただし、ただ座って偶然を待っているだけで幸運が訪れるわけではなく、「偶然の出来事」を「プランドハプンスタンス」に変えるためには5つのスキルが必要だといいます。
そのスキルとは
- 好奇心
新たな学びの機会を探す - 持続力
失敗にめげず努力を続ける - 柔軟性
姿勢や状況を変えてみる - 楽観性
新たな機会と自分の可能性を信じる - 冒険心
結果が見えなくても行動を起こす
(出所)日本マンパワー『キャリアカウンセラー養成講座テキスト』をもとに一部編集
クランボルツ教授は、自分では目標が決められなかったため、コーチに相談するという行動に出ました。そして心理学という新しい学びの機会に目を向け、その後も努力を続けて成功に至りました。
私は、一つめの目標の失敗にめげず新しい学びに挑戦し、目の前の新しい機会を信じて柔軟に行動しました(今、振り返ってみればですが..)
スキルというと難しく聞こえますが、要は 「失敗に負けず、自分を信じて柔軟にチャレンジし続けよう!」ということですね。
これを単なる心構えで終わらせず、スキルとして使いこなすためには、次の考え方が役立つかもしれません。
遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る
「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」
これは、『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーデン著 きこ書房)の中で、謎の老人にしてカリスマ実業家のマックスが語ることばです。
20年近いロングセラーなので、読んだことのある方も多いかもしれませんね。
この本を初めて読んだのは十数年も前ですが、そのときは正直あまりピンときませんでした。
ストーリー仕立てで面白く読めるのですが、そのぶん枝葉も多かったからでしょうか。
ところが最近読み返してみると、この本の重要なメッセージ「いろいろ試してみる」がストンと腑に落ちたのです。
謎の老人が、アップル創業時の有名なエピソードについて語ります。
スティーヴ・ウォズニアックがアップル・コンピュータ第一号を作ったのは、世界を変えたかったからでも、大企業のトップになりたかったからでもない。自作のコンピュータを仲間に自慢したかっただけだった、と。
「必要は発明の母かもしれない。だけど、偶然は発明の父なんだ」
「きみたちの事業は、試してみた結果失敗に終わったんじゃない。試すこと自体が欠落していたんだ」
偶然の出会いや色々試してみることの大切さが、対話形式でわかりやすく語られています。 まだの方はぜひ読んでみることをおすすめします。
私と同様、以前読んでピンと来なかった方も、「いろいろ試してみる」という視点で読み直してみると、新たな発見があるかもしれません。
注意!「キャリア目標はなくてもいい」の例外
ここまで、目標はなくてもOKと書いてきましたが、明確な目標が必要な場合もあります。
たとえば、ハローワークで申し込む公的職業訓練や専門実践教育訓練、特定一般教育訓練などは、できるだけ明確に受講理由(就職目標や学ぶ目的)を示す必要があります。
専門実践教育訓練および特定一般教育訓練とは、厚生労働省の教育訓練給付制度の一つで、専門技術の習得や資格取得など、再就職やキャリア形成のための教育訓練です。
条件を満たせば、受講費用の40%~70%が支給されます。
専門実践教育訓練や特定一般教育訓練の給付を申請するためにはジョブ・カードというキャリアシートのような書類が必要です。
(公的職業訓練でもジョブ・カードが必要な場合があります。詳細は最寄りのハローワークで確認してください)
教育訓練給付を受けるかどうかに関わらず、大学院や大学、専門学校、その他受講料が数十万円にのぼるようなスクールは、当然ながら明確な目的、目標なしに入学するのはおすすめしません。
「やっぱり違うわ」と思ったときの時間的、経済的代償が大きすぎますよね。
また、学校や会社で「目標を明確に書くように」という課題が与えられた場合は、その時点での目標(決まっていなければ仮の目標など)をできる限り考えて書くようにしましょう。
教育訓練給付やジョブ・カードについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
この記事では以下の内容について解説しました。
- 目標を見つけるために学び始めよう
- コツは小さく始めて試してみること
- 目標はいつでも変更していい
- 偶然を最大限に活用するためにはスキルが必要
- 遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る
- ただし、公的職業訓練や会社・学校の課題は例外
あなたのモヤモヤに💡ときたものがあれば、参考にしていただければと思います。