モチベーション

【先延ばし癖を治したい!】モチベーションを左右する「4つの要素」とは?

procrastination

あなたは先延ばし癖に悩まされていませんか?
今まさに何かを先延ばししながら、これを読んでいるのかもしれませんね。

「先延ばし」研究の第一人者として知られる心理学者、ピアーズ・スティール氏によると、先延ばしの経験がある人は約95%。
さらに、およそ4人に1人は先延ばしが慢性化しているそうです。

もし、あなたがその25%に含まれるなら、きっと対処法もよくご存知でしょう。

  • 小さなステップに分ける 
  • 少しだけ取りかかる
  • ご褒美を用意する 
  • ゲーム感覚を取り入れる
  • 周囲に宣言する
  • 環境を整える  
  • 中間目標を設定する 
  • 結果目標より行動目標を決める

などは、本やネットでよく目にする定番のアクションプランです。

れんと

でもアクションプランが色々ありすぎて、何からやればいいのか…

りか

そもそも、そのアクションを起こすモチベーションが湧かないし…

Niko

モチベーションには「4つの要素」が関係しています。
自分のモチベーションを邪魔している要素がわかれば、アクションを起こしやすくなりますよ。


モチベーションに関わる条件を分析し、4つの要素の関連性を明らかにしているのが、2012年に発売されたピアーズ・スティール氏の著書『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』ピアーズ・スティール著 (CCCメディアハウス)です。

「先延ばしの方程式」など、科学的根拠にもとづいたユニークな視点で展開されていますが、実生活で生かすにはちょっとした工夫が必要です。

この記事では、ピアーズ・スティール氏の理論をベースに、その他の情報も参考にしながら、あなたに合ったモチベーションの高め方を提案していきますので、ぜひ最後までお読みください。

この記事でわかること
  • 先延ばしの原因とメカニズム
  • モチベーションを左右する4つの要素
  • 自分に合うモチベーションの高め方

「先延ばし」とは

わかってるけどやめられない

「4つの要素」について解説する前に、「先延ばし」について確認しておきましょう。

あなたがつい先延ばししてしまうのは、どんなことですか?

学び直しやリスキリング
運動やダイエット
貯蓄や投資
家族と過ごす時間

社会人によくある先延ばしの代表格です。

そもそも、私たちを悩ませているこの「先延ばし」って、何なんでしょう?

ピアーズ・スティール氏によると、先延ばしとは「自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的にものごとを延期すること」

たしかに

  • 学び直しやリスキリングを先延ばしすると
    ➡️キャリアアップが遠のく。
  • 運動やダイエットを先延ばしすると
    ➡️健康を害し、体型が崩れていく。
  • 貯蓄や投資を先延ばしすると
    ➡️将来お金で苦労する。
  • 家族との時間を後回しにすると
    ➡️孤独な老後が待っている?

仕事、健康、お金、家族。
犠牲になるのは人生で大事なものばかり。
そんなこと、よーくわかってますよね。

さらに、「先延ばししている」という罪悪感が精神的ストレスになって、心身に悪い影響を与えるとも言われています。

そんな百害あって一利なしの先延ばしを、人はなぜやってしまうのか。

Niko

実は、先延ばしは私たちの体に備わった「防御反応」なんです。

先延ばしの原因とメカニズム

古い脳と新しい脳の闘い

「先延ばし」が防御反応?

順を追って説明しましょう。

「先延ばし」の裏に潜むのは「やりたくない」気持ちです。

でも「やりたくない」気持ちと同時に、「やらなきゃ」って気持ちもありますよね。
それなのに、なぜ結果的に「やらない」状態になってしまうのか?

そこには、生命維持や本能を司る大脳辺縁系と、高度な認知や思考を司る前頭前野の葛藤が関係しています。

大脳辺縁系は脊椎動物の祖先から受け継いだ「古い脳」で、主に視覚や嗅覚など五感の情報をもとに素早く反応します。

一方、前頭前野は哺乳類の祖先から受け継いだ「新しい脳」で、感情や行動を抑制しながらゆっくりと長期的な決断を下します。

難しい問題やめんどうな作業に直面したとき、大脳辺縁系はそれを脅威とみなし、扁桃体と呼ばれる部分からアドレナリンなどのホルモンを放出します。

これが恐怖反応を引き起こし、前頭前野からの指令を抑えて長期的な思考や感情のコントロールを妨げるのです。

参考:TED Ed Why you procrastinate even when it feels bad.


あなたの先延ばし度は?

と、ここまでは実体験からもだいたい想像がつくでしょう。

問題は、どうやって「大脳辺縁系(本能)」を抑え込み、「前頭前野(理性)」を優位に立たせてモチベーションを上げるかですよね。

先延ばしの基本的なメカニズムは上記のように人類共通のものです。

しかし、先延ばしの度合いは人によって違います。
また、先延ばししてしまう理由や状況にも個人差があります。

ピアーズ・スティール氏は心理学分野での独自の調査に加え、経済学や神経科学など様々な分野での膨大な先行研究をメタ分析(分析の分析)によるアプローチで集約しました。

この本の冒頭には、9つの質問に答えることであなたの「先延ばし度」が5段階のどこに位置するかが測れる自己診断テストがあります。

実は私自身、かなり重度の先延ばし屋では?と思っていたので、おそるおそるテストを実施してみたところ、結果は中程度「平均レベルの先延ばし癖の持ち主」でした(ホッ…?)。

テストの結果、私のように先延ばし癖が思ったほど深刻でないとわかれば、精神的ストレスの影響を少しは軽減できるかもしれません。

この自己診断テストは、Amazon Kindle版の無料サンプル部分に含まれています。

興味のある方はAmazonのサイトからKindle版『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』ピアーズ・スティール著 (CCCメディアハウス)のサンプルをダウンロードし、試してみてください。

あなたの先延ばしタイプは?

さらに、著者のスティール氏は行動主義心理学にもとづいて、先延ばしのタイプを次の3つに分類しています。

A どうせ失敗すると決めつけるタイプ

B 課題が退屈でたまらないタイプ

C 目の前の誘惑に勝てないタイプ

『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』ピアーズ・スティール著 (CCCメディアハウス)より


Aは、失敗が続いたせいで成功への「期待感」が弱まった状態。
 いわゆる「学習性無力感」に陥り、挑戦する意欲が湧かないタイプです。

Bは、課題に「価値」を感じられない状態。
 やるべきことが不愉快だったり、億劫だったりするとやる気が出ないタイプです。

Cは、「衝動性」が強い状態。
 将来の利益より目先の快楽を選んでしまう、先延ばし一直線のタイプです。

先延ばし癖のある人は誰でも3つの要素を少しずつ持っているものですが、自分がどのタイプにいちばん近いか、何となくイメージできるのではないでしょうか。

もう少し正確に知りたいという方には、本の中にタイプ分けの自己診断テストがあります。
24個の質問に答えると、どの指数がいちばん高いかを測定できるようになっています。

ちなみに私は3つの指数がきれいに同点となり、バランスの良い先延ばし屋という結果になりました。
喜ぶべきなのかは微妙ですが…。

この自己診断テストに関しては、残念ながらKindle版のサンプル部分には含まれません。
気になる方はぜひ書籍を購入してお試しください。

なお、この記事では、自分のタイプがわからなくても、自分の課題ごとに対策を立てられる方法を提案しています。

先延ばしに関する「4つの要素」

先延ばしの方程式

この本でおもしろいのは著書のスティール氏が考案し、原題(The Procrastination Equation)にもなっている「先延ばしの方程式」です。

「先延ばしの方程式」とは、前出の図解で示した大脳辺縁系と前頭前野の複雑なメカニズムを単純化したもの。

土台は「モチベーション理論の方程式」ですが、「先延ばし」の程度はモチベーションの高さと反比例するため、先延ばしの方程式とも言えるわけです。

『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』(ピアーズ・スティール著 CCCメディアハウス)より

これだけでは「何のこっちゃ?」ですよね。

実は、この方程式を構成しているのが、先延ばしに関連する「4つの要素」です。

先ほどの3つのタイプ分けで、「期待感」「価値」「衝動性」が先延ばしのキーワードになっていたことを思い出してください。

スティール氏はここに「時間」の要素が関係してくると主張しています。

書籍の表現とは少し異なりますが、わかりやすく説明すると

期 待 = 報酬が得られる確率

価 値 = 報酬の大きさ
     
衝動性 = 報酬を待てない度合い
     
遅 れ =
 報酬を待たされる時間

 ※ここで言う「報酬」とは、「喜び」や「楽しみ」全般を指します。

4つの要素の働き

つまり、何かの課題を実行するときに、プラスになる要素が「期待」と「価値」、マイナスになる要素が「衝動性」と「遅れ」です。

方程式ではプラス要素が分子に、マイナス要素が分母にきています。

ただし、これらの要素は自分でしっかり意識しているわけではなく、心の片隅で何となく感じているだけ、ということも多いようです。

たとえば、弁護士を目指して勉強している人の心の片隅には、こんな思いがあるかもしれません。

・弁護士は高収入で周りからも尊敬される職業だ(価値大)
・でも司法試験は難しそうだし、顧客獲得が大変だと聞く(期待小)
・一人前になるまでは何年もかかるらしい(遅れ大)
・自分はできるだけ早く出世したい!(衝動性大)

このケースを上の方程式に当てはめると、
「価値」は大きいけれど「期待」が小さいため、分子(プラス要素)は縮小されます。
「衝動性」と「遅れ」はどちらも大きいため、分母(マイナス要素)は大きくなります。
結果(小さな分子を大きな分母で割ることになるので)モチベーションは低くなります。


弁護士は高収入で尊敬される職業だけど(価値大)、自分がそうなれるかどうかわからないし(期待小)、時間もかかるし(遅れ大)、そんなに待ってられないし(衝動性大)」となると、やる気が湧かずについつい試験勉強を先延ばしにしてしまうわけです。

「先延ばし方程式」の使い方

方程式は大雑把な見取り図

れんと

いや、いちいち方程式なんかに当てはめるの、めんどくさすぎでしょ。

りか

それこそ先延ばししちゃいそう

ですよね。
もちろん、日常のちょっとした先延ばしで「4つの要素」とか考えるのはめんどくさいし、かえって非効率です。

先延ばしの原因がよくわかってる場合も、その原因に集中すればいいので、方程式などは不要です。

スティール氏も、先延ばし方程式は「先延ばしを生み出す神経生物学的なメカニズムを経済学的な視点で説明するための道具」で「大ざっぱな見取り図にすぎない」と書いています。

でも、人生を左右するほど大事なことなのに、なぜだかモチベーションが湧かず、先延ばししてしまっている、という場合はどうでしょうか?

NIko

大ざっぱな見取り図でも、ないよりはあった方がいいと思いませんか?

方程式はすでに使っている!?

実は、私たちは無意識にこの方程式を使っている場合があります。

たとえば、大学受験を思い出してください。

模擬テストの偏差値から無理のない大学を選ぶのは、合格率を上げる(期待大)ためだし、私学を選ぶのは、苦手科目を避けて少しでも楽しく勉強する(価値大)ためでもあるでしょう。

図書館で勉強するのは、周囲の目や雰囲気を味方にして、テレビやゲームの誘惑に負けないようにする(衝動性小)ためだし、積極的に模擬テストを受けるのは、中間目標の達成を励みにする(遅れ小)ためですよね。

これはモチベーションが最大になる理想的な方程式です。

このように、私たちは努めてモチベーションが最大になる行動を取ろうとしています。

それなのにモチベーションが上がらず、先延ばしがやめられないのはなぜでしょうか。

モチベーションを最大化するには?

この方程式で大切なのは、「各要素の大きさと作用」です。
作用とは、モチベーションに対してプラスに働くか、マイナスに働くかということ。

モチベーションを最大化するには、プラスに働く要素(分子の2要素)をできるだけ大きく、マイナスに働く要素(分母の2要素)をできるだけ小さくしなければなりません。


でも、大きくしたり小さくしたり、思い通りにコントロールできないこともありますよね。

その場合は、コントロールしやすい要素に注力して、コントロールしにくい要素を補ってやればいいわけです。

たとえば、偏差値はだいぶ足りないけど、志望校は絶対変えたくない!という場合、「価値」は動かせないわけです。すると合格率は当然下がるので、「期待」は小さくなります。


このままではモチベーションも下がる危険があるので、「価値」以外の要素をコントロールしてバランスを取る必要があります。

方法としては、「現役合格したい!」という「衝動性」を抑えて一浪を覚悟すれば、合格の可能性が上がり、「期待」は大きくなります。

ここで注意すべきは、一浪すると「遅れ」も大きくなってしまうことです。
合格率が上がったことで最初のうちはモチベーションも高くなりますが、目標が遠のいたことで、途中からモチベーションが下がる危険があるからです。

そこで、先ほどの模擬テストのような中間目標を設けて「遅れ」を小さくする対策が必要だとわかります。

社会人の場合は、この例のように単純にはいかないかもしれませんね。

しかし、自分の課題をざっくりとでも当てはめてみれば、モチベーションを上げるために、どの要素をコントロールすればいいかが見えてきます。

自分の課題で4つの要素を洗い出す

4つの要素について、もう少し詳しく具体例を見ていきましょう。

たとえばあなたが「リスキリングでデジタルスキルを習得して、IT分野の専門職で活躍したい」と、思っているとします。
だいぶ前から考えていたのに、まだ何も行動に移せていません。

このケースの「4つの要素」には、具体的にどんな内容が含まれるでしょうか。
考えられるものをあげてみました。

あなたが、期待価値に含まれる内容を大きく感じるほど、モチベーションは上がります。
逆に、衝動性遅れに含まれる内容を大きく感じるほど、モチベーションは下がります。

 期待(報酬が得られる確率)

  • 勉強レベルの適切さ 
  • 仕事と勉強を両立する自信
  • IT分野に転職できる可能性
  • 専門職として活躍できる可能性

 価値(報酬の大きさ)

  • IT分野への興味
  • IT分野で貢献したい気持ち
  • 収入アップ
  • 周囲からの承認

衝動性(報酬を待てない度合い)※1

  • 年齢などへの焦り
  • 現在の経済状況への不安
  • 現在の仕事への不満
  • 勉強内容への興味の薄さ

遅れ(報酬を待たされる時間)

  • スクール選択や費用などの準備期間
  • 十分なスキルを習得するまでの時間
  • IT分野への転職成功までの時間
  • 専門職として活躍できるまでの時間

※ 年齢や経済状況への焦りは、適度であれば自分へのプレッシャーとしてプラスに働くこともありますが、強すぎると目標達成までの時間が待てず、マイナス要素になります。
また、勉強内容に興味が持てないと、SNSやテレビなど目先の快楽に誘惑されやすくなります。

今すぐできるアクション

上記のリストを参考に、あなたの場合の「4つの要素」を洗い出してみてください。

A4の紙を用意し、左上にあなたがいちばん気になっている「先延ばし」事項を書きます。
次に、全体のスペースを4等分し、以下のタイトルを書いてください。

期 待(報酬が得られる確率)

価 値(得られる報酬の大きさ)

衝動性(報酬が待てない度合い)

遅 れ(報酬を待たされる時間)

それぞれのスペースに、思いつくことを書き出していきます。

                          

書き出せたら、大きい、小さいが特に偏っている要素はないか、つまり、モチベーションの足を引っ張っている要素がないかをザックリと見比べてみます。

たとえば、極端な例ですが
「勉強内容がめちゃくちゃ難しそうだし、今の忙しさを考えると仕事と勉強を両立する自信がほとんどないし、転職活動も色々大変そうだ」
と思ったとします。

いわゆる「できる気がしない」という状態ですね。
これだと期待の部分はかなり小さくなってしまいます。

このように、モチベーションの低下に大きく影響している要素があれば、その要素を集中的にコントロールするか、他の要素でカバーする対策が有効だとわかります。

【4つの要素別】先延ばし対策

『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』ピアーズ・スティール著 (CCCメディアハウス)では、13の「先延ばし克服の行動プラン」が提案されています。

あまり知られていないユニークな方法もありますが、いわゆる定番の先延ばし対策も含まれています。

ここではそれらの中から7つを、各要素別の効果にフォーカスして簡単にご紹介します。

「期待」を大きくする

「成功の螺旋階段」

大きな目標を小さな目標に分割する定番の方法ですが、成功体験を自信にして次の目標に進むという「好循環」が生まれるため、螺旋階段と名付けられています。

Aの「どうせ失敗すると思い込むタイプ」は、失敗を繰り返すことで自信を無くし、報酬や成果が得られる確率を低く見積もってしまう状態でした。

課題が小さくなれば一つ一つを達成できる確率が上がり、その達成感が報酬となって期待値を上げてくれるのです。

先ほどの「リスキリングでIT専門職に」のケースでは
「勉強内容が難しそう」
「両立は無理かも」
「転職は大変」

と思ってしまい、期待値が小さくなっていました。
しかし、以下のような小さなステップならできるのではないでしょうか。

・ 超基礎編の動画を探してみる。
・1週間のタイムログをつけてみる。
・リスキリング転職に関する情報を集めてみる。

【やさしく解説】リスキリングに補助金。個人の転職まで支援する制度がスタート 昨年10月、岸田首相が「リスキリング支援に5年間で1兆円を投じる」と表明して話題になりましたね。あれから半年以上が過ぎました。リスキリ...


「脳内コントラスティング法

脳内コントラスティング法は、実現したい理想の状態を具体的にイメージした後に、正反対の現状を同じぐらい具体的にイメージし、実現への意欲を高める方法です。

たとえば、ピカピカの新車を自慢している自分をイメージした後に、オンボロ車に乗ってる自分を同じぐらい鮮明にイメージすると、ギャップを埋めるために積極的に行動できるといいます。

実現したい理想だけでなく正反対の現状もイメージする方法は「メンタル・コントラスト」とも呼ばれ、目標達成のためによく用いられる心理学の手法です。

『やり抜く人の9つの習慣 』ハイディ・グラント・ハルバーソン著 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)でも、「やるべきこと」を具体化する方法として紹介されています。

「価値」を大きくする

「ゲーム感覚・目的意識」

「避けたいこと」ではなく「成し遂げたいこと」を目標に、自分でルールを決めてゲーム感覚でタスクをクリアしていく方法です。

『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』では、サメに追いかけられていると想像しながら練習する競泳選手たちのエピソードが紹介されていました。
途中で泳ぐのをやめたら喰われるというルールなら、泳ぎ続けるしかないでしょう。

「ご褒美」

課題が終わったら高級なコーヒーを飲むなど、達成したときのご褒美を用意する、おなじみの方法です。
また、退屈な作業には好きなBGMをかけるなど、不愉快な課題に楽しいことを抱き合わせる方法も、ご褒美と同様に価値を大きくしてくれます。

ご褒美の効果は説明不要ですよね。

しかし、実は私たちが思っている以上に継続的な効果があるようです。

スティール氏によると、仕事をやり遂げてご褒美を得る喜びを一度経験すると、その感情が次の仕事にも投影されて、仕事そのものが楽しくなるという好循環が生まれるといいます。

「衝動性」を小さくする

「プレコミットメント」

先延ばしにつながる行為に対して先手を打っておく方法です。
具体的には、テレビのコンセントを抜く、SNSのアプリを消去する、目覚まし時計を遠くに置く、退路を断って背水の陣を敷くなど。

初めから逃げ場がない状況を作り、挫折や誘惑に負ける自分を許さない、というのはストイック過ぎると感じるかもしれません。

けれども、「プレコミットメント」は意志の強さに自信がない人ほどオススメの方法です。

たとえば、スーパーに買い物に行く前には何か少し食べておく、というのも「プレコミットメント」です。空腹のせいで衝動買いをする危険を減らせますよね。

「注意コントロール戦略」

誘惑のきっかけになる刺激を減らし、課題に取りかかりやすい環境を用意する方法です。
スマホの通知をオフにする、やることリストを目につく場所に貼る、仕事や勉強の場所を決めておくなど。

カフェや図書館で勉強すると集中できるのは、気を散らすものが少ない上、周囲にも勉強している人がいたりして、自分も頑張らなくちゃと思わせてくれる環境だからですよね。

自宅でも、勉強モードに入れるようなキュー(きっかけ)を決めておくと効果的です。

私は自宅で仕事をするとき、タブレットでYouTubeのポモドーロタイマー付きBGMやカフェミュージックを流しています。


ポモドーロタイマーは、ご存知の方も多いと思いますが、イタリアの作家、フランチェスコ・シリロ氏が考案した、25分間の勉強や作業と5分間の休憩を1セットにする時間術です。

名前の由来は、シリロ氏がポモドーロ(トマト)型のキッチンタイマーを使っていたからと言われています。
そういえば、こういう野菜型のタイマーを昔よく見かけました。

今はポモドーロのアプリも色々と出ているようですね。
私がおすすめしたいのは「TIDE」です。

「TIDE」は「瞑想と睡眠」を主なテーマとしたアプリですが、目的に合わせて「集中」「睡眠」「仮眠」「呼吸」の4つのモードから選択でき、タイマー設定の時間やBGMなども選べます。

勉強や仕事に集中したいときは、ポモドーロの時間設定を幅広く選択できる「集中」モードが便利です。

また「集中」だけでなく、「仮眠」と「呼吸」のモードもおススメです。

勉強中、睡魔に襲われたときは、「仮眠」モードで波の音を聴きながら10〜15分仮眠しましょう。アラームをセットできるので安心です。

「呼吸」モードで小鳥のさえずりをBGMに、画面の風船が膨らんだり、しぼんだりするイメージに合わせて呼吸すれば、心がすーっと落ち着きます。

基本の機能は無料で利用できますので、興味のある方は試してみてください。

「遅れ」を小さくする

「ゴールを設定」

ゴールを明確にし、さらに細分化することで締め切り効果を上げる方法です。

目標が遠い先にあると現実感を感じられず、モチベーションが下がりますが、中間目標があれば適度な緊張感が生まれ、やるべきことも具体的になります。

特に、課題に着手するまでが最難関でもあるため、10分程度のミニゴールを設定することも提案されています。ミニゴールを達成すればモチベーションの壁が破られ、そこでやめてしまう人はほとんどいないからです。

『一流の学び方』清水久三子著(東洋経済新報社)でも、「毎日1時間より、毎日30秒がんばる」を推奨されていました。

結果的に1時間を超える日があっても、入り口はあくまで30秒と決めておき、ハードル設定を間違えない(ハードルを上げすぎない)のが大事だと強調しています。

『ヒトはなぜ先延ばしをするのか』では、これ以外にも科学的根拠にもとづいた効果的な「先延ばし克服の行動プラン」を、豊富な実例を交えて提案されていますので、興味のある方は一読してみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。

この記事では、モチベーションを左右する4つの要素に注目し、先延ばし癖を治す対策について解説しました。

定番の先延ばし対策も、必要な要素に集中して行えば、少ない労力で効率よくモチベーションを高めることができます。

理屈さえ飲み込めれば、自分のやる気をコントロールするのが気持ちよくなりますので、ぜひ一度試してみてください。

  • 先延ばしは体に備わった防御反応
  • 先延ばしの度合いやタイプは人それぞれ
  • モチベーションを左右する要素は
    期待 価値 衝動性 遅れ の4つ
  • モチベーションは各要素のコントロールで最大化できる